ハローワークの求人にある就労移行支援事業所とは?

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求人サイトを見ていると普段あまり耳にしないお仕事を目にすることが多々あると思います。中でも「就労移行支援事業所」などの名称は全く聞いたことがないという方も多いのではないでしょうか。私はハローワークでこの事業所の存在を初めて知り、無資格・未経験ながら実際に正社員として約一年間在籍していたので、今回はその間に知り得た情報を記事にしたいと思います。ちなみに大手ではありません。

就労移行支援とは

就労移行支援とは障害者総合支援法という法律で規定されている福祉サービスの一つで、簡単に言うと障害がある方の就職をお手伝いするお仕事です。

就労移行支援事業所の利用は法律でニ年間までと決められており、利用者はその期間内に就職先を見つけなければなりません。

その他の就労系の障害福祉サービスとして「就労継続支援A型」や「就労継続支援B型」などがあり、これらの事業所の求人もよく見かけますが、それぞれ色合いが全く違います。

社員の具体的な仕事内容

私は新しく開設された事業所のオープニングスタッフとして入社したのですが、具体的な業務内容は大体以下のようなものでした。

①アセスメント
利用者がどのような障害、生活・経済状況、悩みや課題を抱えているかなどを個別に面談で聞き取りをし、支援計画を作成。定期的に実施。

②事業所内での利用者対応
就職に向けた軽作業訓練(紙折りや袋詰め等の内職作業。)、パソコン練習(タイピング・ワード・エクセルなど。)、面接や履歴書の書き方、ビジネスマナーの指導。また、利用者間でトラブルがあれば仲裁し(私がいた事業所では些細な喧嘩やいざこざが結構ありました。)、事業所に対してクレームなどがあれば対応する。

③就職活動支援
障害者向けの就職説明会やハローワーク、実際の企業面接への同行。また、就職したあとも会社に定着できるように(特に精神障害の方の離職率は高い。)、定期的に利用者や企業の担当者と連絡をとりあいサポートする。

④営業活動(私のいた事業所はオープン間もなかったため、特に重視されていました。)
市役所・ハローワーク・病院・特別支援学校・グループホームなどの関係機関へ事業所開設のお知らせ、挨拶回り。広報誌をもっての定期的な訪問。利用者が軽作業訓練を行うための近隣企業への内職作業の受注交渉。広報誌作成(営業先やホームページにて現在の利用者数や、事業所内の雰囲気等の活動報告に使用。)。インターネット上での広報活動(Facebookにて事業所ページの更新など)。

⑤その他雑務
例えば内職作業の受注先に出向き、商品受け取りや納品をしたりなど。

勤務時間や休日、お給料は?

勤務時間
私の場合、大体8:30頃に出勤してお昼休みは丸々一時間、定時は5:00頃で残業はほとんどありませんでした。正直言ってしまうとかなりヌルかったです。

休日
完全週休二日制ではありませんでしたが、日曜は必ず休みで土曜と祝日の出勤が5割程度ありました。

給料
勤務している事業所やもっている資格・役職などで当然変わってきますが、私の場合無資格未経験の一年目で額面は忘れてしまいましたが、手取りで18万程度でした。50代前半の事業所責任者は手取りで30万くらいと言っていたと思います。子供が三人いて奥さんはケアマネージャーとして働いているとのことでした。

事業所はどうすれば儲かる?悪徳業者とかいるの?

就労移行支援事業所は利用者が事業所に一日通う度に、行政からお金(訓練給付金)がもらえるようになっています(一人あたり一日につき8000円程度。)。これに加えて利用者を就職させた実績などが加算ポイントとなり、もらえるお金が増加する仕組みです。なので単純な話、儲けたければ利用者をどんどん増やし、毎日休ませることなく通所させればいいのです。そして恐らく、この極めて単純なビジネスモデルに目をつける悪徳業者は少なからずいると思います。私が勤務していた事業所も悪徳業者とまでは言いませんが、母体が製造業を営んでいる民間の会社だったため、どうしてもビジネスライクに偏ってしまう所があり、それが私の退職した際の一番の理由となりました。

個人的に感じた問題点や実際に働いてみた感想

そもそも私は福祉業界には全く興味がなかったのですが、新規事業所のオープニングスタッフとして入社できるということで、様々な業務経験ができるのではと考え選考に応募し、その意気を買われ内定を貰いました。実際そのときに得た経験は、現在の仕事や人生に役立っていると感じます。ただ、利用者目線で考えた場合、私のような無資格・未経験の素人が職員として多数在籍しているというのは問題があると思います。私がいた事業所の職員数は合計6人だったのですが、有資格者である責任者を除いて、あとの5人は全員無資格かつ未経験でした。またそれらの素人職員が障害や福祉に関心があるのかというと、そんなことはないようで、じゃあなぜ採用されたのかと言えば、おそらく利用者の人気がとれそうだからとかそんな理由だったのではと邪推してしまいます。障害者に対して何の思い入れもない畑違いの民間企業が、この障害福祉ビジネスに参入した場合、とりあえず考えることは利用者の確保でしょうから、言い方は悪いですがキャバクラのようなものを目指す浅はかな事業所が出てきても不思議ではありません。

また、これは制度自体の問題点でもあるのですが、一つの事業所に知的・精神・身体の3障害をごちゃ混ぜにして、一緒にサービスを提供するということに私は無理を感じました。これは各事業者がそれぞれの障害に特化し、差別化されたサービスを提供すれば解決できる話なのですが、ただ人を集めたいだけの事業所というのは、障害の種類に関係なくどんどん利用者を引き入れてしまいます。障害には種別があり、またそれぞれに等級があります。できる事やできない事に明確な差があるので、同じ空間に押し込めて同じ作業や訓練をさせればトラブルが起きるのは当然です。

以上、主に「私の在籍していた事業所」についての問題点を簡単に書きましたが、良質なサービスを提供している事業所も数多く存在するはずなので、もし障害福祉に興味があって就労移行支援事業所で働いてみたいという方がいらっしゃれば、事前にホームページや口コミで事業所の特徴や評判をよく下調べし、検討することをおすすめします。